2016年3月卒業式スピーチ|保育士資格・幼稚園教諭免許の取得なら東京保育専門学校

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2016年3月卒業式スピーチ

心をひとすじに

何よりもまず卒業される皆様に心からのお祝いを申し上げましょう。ご卒業、誠におめでとうございます。そして、卒業される皆様をご指導ご支援くださった教職員並びに関係者の方々と共にこの喜びを分かち合い、改めまして皆様のご尽力に深く感謝いたします。大変ありがとうございました。

 

卒業される皆様は、入学以来、楽しみばかりでなく苦しみやストレスもある中で、強い意志をもって努力されました。その結果として本日を迎えられたわけです。皆勤賞や精勤賞、その他様々な表彰の受賞者がこのように多数にのぼったことは、私にとっては嬉しい驚きです。そして、今年度の聖心祭は昨年度にも増して大変素晴らしいものでした。これ皆、この上ない快挙です。皆様が、佐久間彪神父様作詞作曲の聖歌『マリアさまの心』に歌われている『かしの木のように強い心』をもって励まれたことの証左であります。

 

強い心、強い意志に関連して、最近アメリカと日本で、ケリー・マクゴニカルさんの2冊の本が評判です。マクゴニカルさんは米国スタンフォード大学の教授で健康心理学と神経科学の専門家です。原著の題は『The Willpower Instinct』 と『The Upside of Stress』ですが、神崎朗子さんによる翻訳書では『スタンフォードの自分を変える教室』と『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』になっています。餞の教養特別講座として、そのさわりをご紹介しましょう。

 

意志の力とは、脳の前頭前皮質の3つのそれぞれ異なる領域が受け持つ『望む力』と『やる力』と『やらない力』から成り立っています。『望む力』は晴佐久昌英神父様が卒業感謝ミサでお話しくださった『信じる力』と同じだと思います。あることを成し遂げるには『やる力』が必要ですが、何かを取りあえず後回しにする『やらない力』も必要になり、『やる力』と『やらない力』をコントロールする『望む力』がとても大事になります。

 

適度なエクササイズ、運動、ゆったりした呼吸、十分な睡眠を心がけ、適切な血糖値を保つように飲食することが意志力強化の秘訣だそうです。エクササイズについてはオーストラリアのマッコリー大学の研究者により『驚異の薬』と言わしめるほどの効果があると実証されています。特に『望む力』を司る前頭前皮質が強化されます。また、意外なことに、エクササイズは長時間で激しいものではなく、短時間で軽めのもので、いわゆるスポーツの範疇にない、子どもとの遊び、ガーデニング、クリーニング、ウィンドーショッピング、散歩など、身近な生活行動で十分だという事です。

 

皆様は、おそらく無意識のうちに、お一人お一人、違った形でこの三つの力を総合した『意志の力』を発揮されたのだと思います。今後是非この三つの力について自己分析され、さらに『驚異の薬・エクササイズ』なども検討されて、『意志の力』のレベルアップを図っていただければと思います。

 

マクゴニカル教授は、ストレスについても目から鱗の説を展開されています。ストレスは悪いものという思い込みこそが有害であり、ストレスの欠如はかえって人を不幸にする、ストレスは役に立つことなどを理解し、ストレス反応を最大の味方にすると良いのです。ストレス反応は一つではなく、『チャレンジ反応』『思いやり反応』『絆反応』『生きがい反応』などポジティブなものもあり、『望む力』『信じる力』で選ぶことができるのです。私自身も遅まきながら参考にしたいと思っています。

 

さて本日も、全員で校歌『浄き乙女ら』を斉唱いたします。この校歌の第一節には、本校の教育方針の基となるカトリックの精神を象徴する野の花が、第二節には、保育者を志す者の心構えが、第三節には、真理を探究する人間の理想が歌われています。そして、どの節でも『心をひとすじに』と歌われています。この『心をひとすじに』の姿勢は、佐久間神父様の『かしの木のように強い心』や、マクゴニカル教授が言うところの『望む力』、晴佐久神父様の『信じる力』にも通じる大変大事な非認知能力のあらわれです。

 

逝去された礒山進副校長先生は、誠心誠意、正に『心をひとすじに』、教育者としての道を究められました。礒山進先生に、心からの哀悼と感謝の意を捧げるとともに、私たちも『心をひとすじに』真の保育者・真の教育者への道を歩み続けましょう。

 

それでは皆様、行ってらっしゃい!

 

(東京保育専門学校2016年3月卒業式スピーチ 松本勲武)

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