新入生へのメッセージ “大船に乗ろう!”
ご入学本当におめでとうございます!
ようこそ東京保育専門学校に入学されました。
元気いっぱいの大勢の皆様をお迎えしてこんなに嬉しいことはありません。
私は皆様が東京保育専門学校を選ばれたのは大正解であると思っています。
本校が日本一の保育者養成機関であると信じているからです。
理想の保育者になりたいと願う皆様と、理想の保育者を育てたいと願う教職員の先生方は、例えて言うと同じ大きな船に乗る乗客と乗員です。船長である校長は、安全に航海して、乗客の皆様を途中下船させることなく、卒業という目的地までお送りする責任があります。 その船長が一番気にかけていることは、乗船する全ての皆様の安心安全、特に心の健康です。その心の健康に一番影響を与えるのは社会的健康です。社会的健康とは、社会の中で他の人から認められ、必要とされ、孤立しない、孤独を感じない、安心できる居場所があるということです。
東京保育専門学校という船が、すべての皆様にとってこのような場所となるようにお互いに努力いたしましょう。
日本で今最も畏れられている新型コロナによる犠牲者と自殺者のどちらが多いかご存知ですか?
自殺者の方がはるかに多く、その大きな原因は孤立・孤独であると言われています。孤独が致死性で毒にもなることから、孤独の独を毒物の毒に代えた孤毒と言う新しい言葉ができています。実はこの孤毒に対する解毒薬、孤独の病に対するワクチンがあるのです。それは思いやりの精神、カトリックの愛の精神です。 理事学監の晴佐久神父様は、孤立している人、孤独な人を支援する様々な活動をしていらっしゃいます。孤立している人、孤独な人を教会に招き、手作りの料理を一緒にゆっくり食べる会、産後鬱のお母さん達に子ども連れで集まってもらい、子育て経験が豊富なお母さん経験者のベテランと懇談する会などで、皆さんが明るく元気になる様子を伺っています。正にカトリックの愛の精神が孤毒の解毒薬となっている証拠です。
話が代わりますが、東京保育専門学校は文部科学省から職業専門実践課程の認定を受けました。
要するに最高の専門学校であるというお墨付きを頂いたのです。これは、保育の現場の声を生かす教育課程編成委員会と学校関係者評価委員会による改善の努力が評価された結果です。先週この委員会に出席されたお茶の水女子大学の浜口順子教授から、「コロナ禍で大変困難な状況でも対面授業の教育活動をしっかり行う事が出来たのは、カトリックの愛の精神を大事にしている組織の強みです。敬意を表します!」というお褒めの言葉を頂きました。 多くの高等教育機関では、昨年度は十分な対面授業を行う事ができませんでした。しかし本校ではオンライン授業は前期の前半のみで、その後は対面授業と現場での保育実習・教育実習・施設実習を完了させることができました。学生の皆様と教職員の先生方がストレスを力に変えて努力された結果です。社会的距離がゼロの世界である保育の現場での緊張感に満ちた実務経験は、卒業生の皆様の自信を深める最高の経験になりました。
心理学博士のケリー・マクゴニガルさんが「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」という著書の中で、ストレスに関する科学的研究の成果を紹介されています。ストレスの毒を薬にすることができます。ストレス反応は一つではありません。「思いやり・絆反応」「チャレンジ反応」などの良い反応があり、自分で選ぶことができます。カトリックの愛の精神に深い関連のある「思いやり・絆反応」に注目してみましょう。他者を思いやり、労わり、人助けをすると、恐怖が和らぎ、希望が膨らみ、何と時間が増えます。思いやりや、労わりや、助けを受けた人ばかりでなく、行動を起こした側の人にも恩恵があるのです。昨年度、コロナ感染への恐怖という大きなストレスがある中で、学校の先生方は何としても充実した指導を行い、絶対に卒業させてあげたいと願っていらっしゃいました。このように大変思いやりのある先生方の仕事ぶりを拝見してきて、「思いやり・絆反応」の驚くべき効果を確認することができました。立派に成長した卒業生を計画通り送り出すことができましたし、毎年掛け声だけで終わっていた幾つかの学校改革の課題が一気に達成されました。本当にびっくりしました。時間が増えたとしか言いようがありません。
もうひとつ重要な事をお話しします。自分のためだけの目標を追及する、要するに自己利益だけを追求すると孤独感が強まり、心の健康が損なわれます。しかし自分の目標を自分より大きな目標、利他的な目標に代えるとストレスが力になります。「思いやり・絆反応」の恩恵を受けることになり、幸せになります。同じ保育者でもお金のためだけで保育者になった人はいつまでたっても幸せになりません。一方「子ども達のために理想の保育を行なう」という大きな目標を持つ人は、ストレスがあってもそれが力となり幸せになれます。理想の保育は「思いやり・絆反応」の溢れる世界でもあります。 紹介しきれなかった他のストレス反応については、船旅の途中で機会を見つけてお話ししましょう。待ちきれない方は、図書室にあるマクゴニガルさんの本をお読みください。
それでは、スピーチの結びです。皆様は、カトリックの愛の精神を大事にする先生が乗組員の大船に乗っています。孤独のSOSには「思いやり・絆反応」が出動します。 私の例え話を信じて、大船に乗った気持ちになりましょう!
校長 松本勲武