【2020年度卒業式】校長メッセージ(卒業式式辞)

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【2020年度卒業式】校長メッセージ(卒業式式辞)


2020年度卒業式式辞 「レジリエンス」

 

ご卒業まことにおめでとうございます。

 

新型コロナウイルス感染症の流行で混乱する社会状況の中、皆様は大変粘り強く努力され、専門士の称号と幼稚園教諭二種免許状ならびに保育士資格を手に入れられました。
卒業式は毎年“めでたい”のですが、今年の“めでたさ”は格別です。
ご家族の方々もさぞかし御慶びの事と拝察致します。
学校の期待に見事に答えられた皆様と、その皆様を粘り強くリードし、サポートされた教職員の先生方に心から感謝いたします。本当にありがとうございました。

 

昨年度の末から新型コロナ感染症が流行し始め、今年度初めには緊急事態宣言が発出されました。この事態に即応して先生方が突貫作業をして下さった結果、他校に先駆け、一早く、オンラインによる遠隔授業が始まりました。しかしながら夏休み前には本来あるべき姿の対面授業に戻すことができました。これは、感染防御のため、皆様と先生方が心を合わせて衛生管理・健康管理の強化に力を入れ、授業時間割の組み換え等の工夫をして下さったおかげです。その後、校内に感染クラスターを発生させることなく対面授業と実習園での実習を無事完了することができました。

 

他校では、対面授業に戻すことができず、現場実習を断念してしまったところもあったと聞いております。保育は社会的距離ゼロの世界です。対面授業や実習園での実習をしないで卒業するほど自信の持てない卒業はありません!
皆様と本校、実習園の三者間の信頼関係がしっかり保たれていたからこその現場実習実施の快挙です。この機会に改めてお世話になった実習園の先生方に感謝申し上げましょう。厳しい状況の中で本校学生を丁寧にご指導下さり本当にありがとうございました。

 

2019年の入学式の式辞では、学びの5Kを紹介させていただきました。
「カトリックの愛」の学びにつきましては、晴佐久神父様にご講評いただきましょう!
「コミュニケーション力」、「健康管理」、「行動力」、「継続力」の4Kについては、私からお話しします。皆様全員合格です。特にストレスが多い中で、互いに助け合い、粘り強く努力を続けた皆様の継続力は称賛に値します。素晴らしいことです。

 

余談になりますが、昨年のゴールデンウィークの頃に、家に届いた週刊医学界新聞を開封してギョッとしたことがありました。「弾よく乱を制す」と書かれた大文字の表題が目に入ったからです。ちょうどそのころ香港での民主化デモや米国でのBLM(Black Lives Matter:黒人の命も大事だ)のデモが話題になっていたので、てっきり弾は弾圧の弾、銃弾の弾と解釈し、「銃弾による弾圧でデモの騒乱を制圧する」という話かな? 物騒だな!と感じました。しかしよく読んでみたところ、弾は弾でも弾力性の弾、弾力的の弾で、実際は「医療関係者が弾力的に対応して、コロナの感染増大による医療崩壊の混乱を制する」ということでした。まんまと一杯食わされました。

 

戦争や災害などで大変辛い思いや大変恐ろしい思いをしても、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しむことなく何事もなかったかのように社会で大活躍している人がいます。米国の研究者がこのような人の資質である非認知能力について、名詞のresilienceや形容詞のresilientと言う用語を使い始めました。これらは元々工学分野で金属の性質を表す用語の一つとして使われていて、日本語では、それぞれ、弾力性、弾力的という意味です。この認知能力を日本で表現する場、弾力性、弾力的という直訳のほか、“悲劇から立ち直る力”、“折れない心”などの意訳や、外来語としてカタカナ書きのレジリエンスやレジリエントが用いられます。私は、“粘り強さ”、“粘り強い”という表現も含まれるのではないかと思います。

 

このレジリエンスを強化するために大事な事は、大きな使命感を持つ事、仲間を持つ事、現実から逃避せず何か解決策を工夫する想像力と、それを実行する行動力であると言われています。私はもう一つ「先ほど神父様がお話になった“何か大きな力”が自分を守っていてくれる!」と感じる潜在意識が大事ではないかと考えています。

 

私自身はしっかり読んだり、見たりしたわけではありませんが、世の中では漫画やアニメの「鬼滅の刃」が大人気のようです。これは敵討ちで鬼退治をする主役の竈門炭次郎とその仲間たちの“折れない心”に人々が共感するからであると解説する人がいます。もう一つの大きな理由は、「鬼滅の刃」が「忠臣蔵」のようなリベンジものである事ではないでしょうか?

 

ここで、皆様ご自身のレジリエンスについて考えてみましょう。使命ということでは、「敵討ち」のように激しく、華々しいわけではありませんが、皆様が掲げる「カトリックの愛による理想の保育」の方が遥かに気高く、高邁かつ平和で、真に尊敬に値するものであると私は信じています。そして、皆様には互いに支え合って5Kの学びに取り組んだ仲間がいますし、行動力も継続力もあります。学びの5Kとレジリエンスが深い相関関係にある事に気付かされますね!
先ほど、皆様を代表して12名の方が表彰されましたが、私は皆様全員が、自分はレジリエンス賞の受賞者であると自負していただきたいと思います。

 

就職を希望された方は、今回が初めてとなる男性の卒業生も含めて全員が就職先を確定されました。今世の中では分野によっては就職が大変厳しいと聞いておりますので、大変ありがたいことです。就職先は社会福祉法人、学校法人、株式会社、社会福祉事業団、地方自治体、宗教法人、一般社団法人等多岐にわたっています。そして更に勉学・研究を続けるために大学の3年次に編入学される方もいらっしゃいます。

 

話が前後しますが、先月全国保育士養成協議会関東ブロック協議会が主催する第34回学生研究発表会が開催されました。大学から14件、短期大学から5件の発表があり、専門学校からの発表は東京保育専門学校の2件のみでした。皆様の中の研究熱心な10名の方々が共同研究者です。講評者からお褒めの言葉をいただきました。私も研究者でしたので、この成果を大変誇らしく思いますし、好きが高じて研究者を目指そうとされる気持ちもよく分かります。

 

結びの前に学校の社会貢献をピーアール致しましょう! 学校の先生方は、学校の学習環境を整えて、より良い学習内容を教授する事を主な任務とされていますが、卒業生も含めて学外の方々のお役にも立ちたいと考えていらっしゃいます。本校は、3年前から、厚生労働省の認可のもと保育士さんのキャリアアップ研修を行っています。来年度からは新たに、文部科学省認可のもと幼稚園教諭の教員免許更新講習を行うこととなりました。いずれもe―ラーニングで受講できます。皆様が利用しやすいシステムですね!卒業生の皆様と本校が連携して保育の世界のレベルアップに貢献してまいりましょう。

 

最後になりましたが、皆様が晴佐久神父様のお言葉を忘れず、レジリエンスを更に磨き、幸せで健やかな人生を歩まれますよう心から祈念いたします。
それでは、行ってらっしゃい!

 


東京保育専門学校 校長 松本勲武

 

追記 本校の校外セミナーの会場として長年使わせていただいてきた伊豆天城山荘がコロナ禍の影響で閉館となりました。2019年5月の校外セミナーでは、皆様の素晴らしい2部合唱の校歌を聴いて感激の涙を流したことを懐かしく思い出しました。

 

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