2023年度 入学式 校長メッセージ 「楽しい保育」
ご入学大変おめでとうございます。
ようこそ東京保育専門学校に入学されました。
晴佐久昌英神父様は、“保育は子どもたちの心と体を守り育て、愛される安らぎと愛する喜びを体験させる、何にもまして尊い仕事です” とおっしゃっています。皆様がこのような保育の心と使命感を育み、全員が真の保育のプロとなって巣立っていかれることを心から願っています。
人から何回も聞くよりも、自分で実際に見た方がすぐに理解できますよという意味の格言「百聞は一見に如かず」は皆様よくご存じだと思います。 保育の学びでは、これを一歩進めて、「百見は一行に如かず」が重要です。一行の行は、行動の行です。例えばピアノの演奏を見ているだけでは弾けません。何度も練習して初めて弾けるようになります。そして「百行は一考に如かず」がさらに大事です。一考の考は、考察の孝です。ただ弾くだけでなく、振り返り工夫することが上達につながります。保育の学びのハイライトである実習は、これらの格言を実践する最高の舞台になります。皆様お一人お一人が主役であることを意識しましょう!
保育の世界では、家庭や園での「いじめ」や「虐待」などの、何とも痛ましいニュースが跡を絶ちません。そして摘発された加害者は、一様に「躾のため」あるいは「教育のため」であると言い訳しています。そして少なくない園が、期待している親のため、園の運営のために、子どもに集団行動の規律を仕込むことを重視しています。大人の都合を優先した、大人主体の保育です。
そのような中で、人材の確保とマンパワーの増強が課題ですが、行政も後押しして、「子ども主体の保育」が推奨されています。
先月開催された聖心学園幼稚園の生活発表会で、その素晴らしい事例を目の当たりにすることができました。子ども達が話し合って、友達の良いところや得意なところを見つけ出し、先生がそれを短くまとて、ゆずの『友達の唄』の替え唄バージョンをつくったのです。子ども達は、友達一人一人を褒める歌詞を、本当に楽しそうに、大きな声で唄っていました。えがおかわいい〇〇ちゃん、くらすのおたすけまん〇〇ちゃん、こころがやさしい○○くん、おもしろかっこいい〇〇くん、だれとでもなかよくなれる○○ちゃん等々、歌詞はクラスの人数分の21番以上あるのに、全員が全部おぼえていました。褒められた時の誇らしげな顔、嬉しそうな様子、そして参観して一緒に唄っている保護者の満足そうな様子を見て感銘を受けました。晴佐久神父様の保育の心が、見事に体現されています。
「子ども主体の保育」とは「楽しい保育」と言い換えることができます。
猛威をふるったコロナ禍も下火になり、「楽しむ」という言葉が、今年のキーワードになるかもしれません。
先月行われたワールド・ベースボール・クラシックでは、ハラハラドキドキでスリル満点の漫画のストーリーのように、日本チームが難敵を次々と下し、完全優勝してしまいました。大谷翔平選手、ダルビッシュ有選手、ラーズ・ヌートバー選手をはじめとする選手たちの野球を楽しむ姿勢が、求道者的鍛錬と規律を重んじる従来の野球観に、新風を吹き込みました。ヌートバー選手のペッパーミルのパフォーマンスは、野球ファン以外の人達も楽しませ、広まっています。
最後に、先ほどご紹介した格言に、「百苦は一楽に如かず」を加えたいと思います。
先生に強制されて学ぶのは苦しくて嫌なものですが、友達と仲良く助け合いながら、自から進んで学ぶのは、楽しく、効果的です。入学前授業に出席された方たちは、マンツーマンのピアノの手ほどきを受け、教室では周りの人達と打ち解けて、楽しい学びを経験されましたね! これから学生の皆様と先生方が協力しあって、もっともっと楽しい、「学生主体の学び」の場を築いて行きましょう。 楽しい保育をするのは楽しい先生です。
松本 勲武