幼稚園教諭や保育士の仕事内容は、「子どもたちと遊んでお世話をするだけ」というイメージを持っている方も多いでしょう。
確かに子どもたちと遊ぶことは大切な仕事内容ですが、その他にも様々な仕事があります。
幼稚園教諭や保育士を目指すのなら、仕事内容について、もう少しイメージを広げておく必要があるでしょう。そこで本記事では、幼稚園教諭と保育士の仕事内容について紹介します。
幼稚園教諭・保育士はただ遊ぶことだけが仕事ではない!
幼稚園教諭や保育士は、ただ子どもたちと遊ぶことだけが仕事ではありません。
自分の過去の記憶やよく見る幼稚園・保育園の光景がそのようなイメージを想起させますが、幼稚園教諭や保育士は他にもさまざまな仕事をこなしています。
子どもたちと接すること以外にも多くの役割があるため、毎日忙しく立ち回ることになるでしょう。
そのため幼稚園教諭や保育士として働くためには、体力や仕事へのモチベーションを高める工夫も必要です。
保育・幼児教育を専門家として実践するための技能の修得
幼稚園教諭や保育士は、子どもの育ちや人格形成に深く関わる責任の大きい仕事です。それを自分の生業とするためには、保育・幼児教育を学術的にも臨床的にも理解し、実践できる技能が備わっていることが最低条件となります。技能が備わっている事の証が「幼稚園教諭免許」であり、「保育士資格」です。
働くにはこれら資格の取得が課されていることからも、「遊んでいるだけ」という仕事でないことは皆さんもお分かりになるところかと思います。
では、具体的には何を修得するのか?を知ることが、保育の仕事を理解する助けになります。一例に本校での学びの内容をご紹介します。
〈学修内容〉
●保育/幼児教育の目的と必要性、社会的役割、歴史
●保育/幼児教育行政
●子ども理解(心理学、保健、食と栄養、発達過程等)
●保育内容の理解と保育方法の修得
- 5領域(環境、健康、言葉、人間関係、表現)の理解
- 特別支援教育、保育(障がい児保育含む)
- 保育カリキュラム(保育計画)
- 乳児保育
- 子育て支援、保護者支援
- ピアノ、歌、製作、身体表現、手遊び、読み聞かせなど
●実習 2.5か月(幼稚園:1カ月、保育園:1カ月、その他の児童福祉施設:2週間)
など
この学びの内容からもわかるように、保育の仕事の目的は子ども達が園で過ごす時間通して、子ども達の健全な成長を総合的に促していくということです。
「遊ぶ」ことはその仕事の中で大変に重要な要素ですが、それ以外の時間、たとえばお集まりで先生のお話を聞くことや、しっかりとご飯を食べること、お昼寝をすること、ご挨拶をすること、きまりを守ることなど、生活の一つ一つの時間を子どもの成長につながる環境として作り上げていくことが、幼稚園教諭や保育士の仕事です。
幼稚園教諭の仕事内容
ここからは、幼稚園教諭と保育士それぞれの特徴的な仕事内容についてご紹介します。まずは幼稚園教諭です。
遊びを通して子どもたちがさまざまな経験を積む
幼稚園では、満3歳から小学校入学前までの幼児が通います。
ある程度生活に必要な習慣が身についている年齢の子どもが多いため、幼稚園においては、園で過ごす教育時間を通して、小学校以降の学校教育の基礎となる「学びに向かう姿勢」を育むため、さまざまな経験をする機会を提供するのが特徴です。
幼稚園と聞くと、読み書きや簡単な計算、英語教育などを思い浮かべる人もいますが、実は、それは主の活動ではありません。それら小学校の教科を先取りするような時間は、本来的な幼稚園教育の目的とは異なっています。
幼稚園での主活動は、「遊び」です。
その目的は、さまざまな遊びの活動を通して、体験的に「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」という5領域に表される力を子どもたちが養い、それを伸ばしていくことにあります。
これらの力を獲得するための「遊び」とはどういうものか?
それを考え、保育計画を作成して日々の子どもたちとの活動時間を過ごし、サポートしていくのが幼稚園の先生の重要なお仕事となります。
実際には、幼稚園の5時間程度ある教育時間のうち、「一斉活動」呼ばれる2時間程度の時間を使い、このさまざまな「遊び」を展開していきます。
この時、子どもたちが楽しく遊びに取り組むことができるように、声掛けや遊び方を指導したり、子どもたち同士のやり取りを援助したりすることで、「子どもが自ら主体的に」遊びこむ姿を捉えることが大切です。子どもは主体的に遊ぶ経験を通して、5領域の力、学びに向かう姿勢を獲得していくと考えられています。それを支える先生は、子どもの近くに寄り添い、対話的、応答的な関わりを行っていきます。
幼稚園では、1人で30人近くの子どもたちを担任するため、対話的、応答的な関わりをクラスの全ての子どもたちと築いていくためには、子どもの発達過程の理解に加え、全体を俯瞰する目や子どもの姿や心情への気づきの力が求められます。
活動以外の面でも、お着替えやお仕度、食事など基本的生活習慣が身につくよう園生活の中でのサポートも行います。
保育士の仕事内容(保育園の場合)
次に、保育園における保育士の仕事内容についてです。
子どもの心身の発達をサポートする
保育士の働く保育園では、0歳(生後57日以上)~小学校入学前の子どもたちが通っています。
また、保育園の目的は保護者の代わりに日中の保育を行うことにありますから、家庭と連携しながら子どもが生活習慣を築くためのサポートに大きな役割を果たしています。
そのため子どもたちの生活全般における支援と安全の確保、情緒の安定、心身の発達に必要なサポート(=養護)と遊びを通した小学校以降の学校教育への準備(=教育)の機会の提供の両方を行うのが保育士の基本的な仕事内容です。
子どもの年齢に応じて支援の内容はさまざまですが、例えば0歳児であればミルクをあげたり、抱っこをしながら安心して眠れるようサポートしたり、親代わりの役割を行っています。
また年齢が大きくなるにつれ、食事をする前の挨拶や、食事中のマナーなどを教えて、集団生活でもきちんとご飯が食べられるように支援する、自分で着替えられるように方法・手順を教えたり、排泄がひとりでできない子どもにはトイレトレーニングを行い、普段の生活で困らないようにサポートするなど、自立につながる支援をしていきます。
このように生活における基本的な習慣や流れを教え、またその必要感を子ども達自身が感じ、だんだんと自分からできるようにしていくことが、保育士の仕事内容の重要な部分でもあります。
また、一日の中で多くの時間に割いているのが、遊びの時間です。保育園での遊びは、幼稚園と比べると子ども達自身が自分のやりたい遊びをする「自由遊び」の時間が多く取られています。この時、前述の幼稚園教諭と同様に、子ども達が「自ら主体的に」遊ぶことができるよう、環境設定や援助を行っていきます。
もちろん、幼稚園と同様に一斉活動の遊びを通した教育も行っています。一斉活動の時間を短く設定するケースが多いですが、5領域を踏まえた様々な活動を考え、計画することも保育士の大切なお仕事です。
自由遊びが多いのは、子どもたちが園で過ごす時間が長いため、子どもが過度な疲労感を感じたり、ストレスを感じたりしないようにするためです。
これらの仕事を行う前提となるのは、子どもが安心して通うことができる環境づくりです。施設環境はもちろんですが、何よりも大事なのは子どもが「先生大好き」と安心して身を預けられる人間性の獲得と信頼関係を築くことでしょう。この環境づくりこそが、まず保育士にとって重要なお仕事となります。
幼稚園教諭・保育士に共通する仕事内容
幼稚園教諭や保育士には、共通する仕事内容も多数あります。
例えば園内の清掃や、衣服の洗濯、設備の点検などは、子どもたちが健やかかつ安全に過ごせる環境を作るためにも、毎日欠かせません。
また、日々の保育計画の作成や、その計画の実施のための材料の準備や手順の確認も必要です。
その他、保護者や向けた資料作成などもあります。
幼稚園・保育園での生活や活動を園だよりとして配布したり、個々の子どもの行動を記録して詳細を伝えたりといったことも行います。子どもの健やかな成長のためには、幼稚園においても保育園においても保護者とともに育ちを見守るということがとても大切です。
また、運動会やお祭りなどのイベント行事の企画や運営を行うこともその一つです。
地域と密着したイベントの場合には、園の外部にいる人たちとコミュニケーションを取って、子どもたちが楽しめる企画を作ることが求められます。
まとめ
幼稚園教諭と保育士には、それぞれ基本となる仕事内容があります。
また、ここでご紹介したもの以外にも、様々な業務があります。職場によって求められる役割や日常業務は変わってくることも踏まえ、この機会にそれぞれの仕事内容をイメージしておきましょう。